「もうすぐ退職を切り出さなければいけないけれど、強く引き止められたらどうしよう」という不安を抱えながら、この記事にたどり着いた方もいるかもしれません。あるいは、すでに退職の意思を伝えたあとで、上司から予想していたよりも強く引き止められ、心が揺れている最中の方もいるのではないかと思います。
私自身、文系・未経験からIT業界へ転職する際、当時の勤務先で退職を切り出したときに、想像していたよりも強く引き止められた経験があります。以前の記事転職後悔しないために!未経験IT転職でやってはいけない5つのことで、内定を承諾したあと、退職の意思を上司に伝えるタイミングを1〜2週間先延ばしにしてしまったことを紹介しましたが、この記事はその続きにあたる話です。実際に伝えたときに何を言われ、どう心が動いたのか、そして最終的にどう対応したのかを、実体験ベースでまとめます。
この記事でわかること
- 退職を伝えると引き止められやすいのは、どんな状況か
- 私が実際に受けた引き止めの内容と、心が揺れた理由
- 引き止めにどう向き合うか判断した基準と、実際に使った断り方
そもそも、退職を伝えると引き止められやすい状況とは
結論から言うと、後任がすぐには見つからない状況や、繁忙期・大きめの案件の途中で退職を切り出すと、引き止められやすい傾向があると感じています。
理由は、会社側にとって欠員補充や引き継ぎの調整にかかる負担が大きいほど、退職者をいったんは慰留したいという心理が働きやすいためです。
私の場合、内定をもらったタイミングは、ちょうど比較的規模の大きい案件を任されたばかりの時期と重なっていました。だからこそ「今このタイミングで言い出しにくい」と感じ、伝えるのを1〜2週間先延ばしにしてしまったことは、以前の記事でも紹介した通りです。振り返ると、このタイミングの重なり自体が、後の引き止めにつながる一因になっていたと感じています。なお、在職中に転職活動を進めるかどうかの判断基準そのものは焦って辞めない!在職中に転職活動するか迷った私の判断基準で詳しく紹介しています。
転職活動中に相談していたエージェントの担当者から、引き止めにはいくつかの典型的なパターンがあるという話を聞いたことがあります。あくまで担当者個人が見聞きした範囲での話であり、すべての会社に当てはまるわけではありませんが、参考として整理すると次のようになります。
| 引き止めのパターン | 内容の例 | 私が実際に近い形で経験したか |
|---|---|---|
| 待遇改善型 | 昇給や昇格、業務内容の見直しを提示される | 近い形で経験した |
| 時期先送り型 | 「今の案件が落ち着くまで待ってほしい」と伝えられる | 近い形で経験した |
| 情に訴える型 | 「これまで頑張ってきたのを分かっている」と伝えられる | 近い形で経験した |
| 保留要請型 | 「今すぐ返事をしなくていい、もう一度考えてほしい」と伝えられる | 近い形で経験した |
タイミング自体を完全にコントロールするのは難しいものの、自分がどんな状況で退職を切り出そうとしているのかを事前に客観視しておくと、引き止められる可能性への心構えができると感じています。
実際に上司から受けた引き止めの内容
私が退職の意思を伝えたのは、先延ばしにしていた案件がひと区切りついた直後の面談の場でした。
切り出してすぐ、上司からは驚いた様子で「正直、今の案件で抜けられるのは厳しい」という反応が返ってきました。そのうえで、「給与のことなら会社に掛け合う余地があるから、もう少し待ってくれないか」と待遇面の見直しを提案されました。
その日は結論を出さず、数日後にあらためて時間をもらう形になりましたが、次に話したときには「人事にも正式に相談していて、昇給の話も進めている。返事はまだ待つから、もう一度考え直してみてほしい」と、判断そのものを保留するよう求められました。1回の面談で終わらず、複数回にわたって引き止めのやり取りが続いたのが、私にとっては想定外の展開でした。
引き止められて、心が一瞬揺れた理由
正直に言うと、引き止められた直後は心が一瞬揺れました。
理由は、これまで自分を評価し、責任のある案件を任せてくれたことへの恩義のような感情と、新しい職場でうまくやっていけるかどうかというIT業界未経験ならではの不安が、同時に押し寄せてきたためです。
「ここまで良くしてもらったのに、恩を仇で返すような形にならないか」という気持ちが一瞬頭をよぎり、正直、その場で「もう少し考えます」と答えてしまいそうになりました。ただ、その夜に一人で考え直したとき、自分がIT業界への転職を決めた理由(通勤や働き方の窮屈さへの不満、将来のキャリアや収入への不安)は、待遇が多少良くなったところで解消されるものではないと気づき、揺れていた気持ちが落ち着きました。
引き止めにどう向き合うか、私が判断した3つの軸
結論、私は「引き止めの内容が、そもそも転職を決めた理由そのものを解消するものかどうか」を最優先の判断軸にしました。
理由は、待遇や一時的な配慮の提示は、退職を思いとどまらせるための対処にはなっても、転職を考えるようになった根本の理由まで解消してくれるとは限らないと感じたためです。
実際に自分の中で確認した軸を整理すると、次のようになります。
| 判断軸 | 自分に問いかけたこと | 気づいたこと |
|---|---|---|
| 根本の解消度 | 提示された条件で、転職を考えた理由自体が解消されるか | 給与や配慮では、働き方や将来のキャリアへの不安は解消されないと気づいた |
| 内定先への誠実さ | 承諾した内定を今さら翻すことに、自分は納得できるか | 選考を通じて時間を割いてくれた内定先への誠実さを裏切りたくないと感じた |
| 時間が経ったときの後悔 | 今、情に流されて残った場合、数か月後にまた同じ迷いを繰り返さないか | 一度気持ちを固めた経緯を振り返り、同じ迷いをまた繰り返す可能性が高いと判断した |
この3つを自分の中で言葉にしたことで、その場の感情に流されず、退職の意思を変えないという結論に落ち着けたと感じています。
実際に使った、揺るがず断るための伝え方
結論、私は「評価してもらえたことへの感謝」と「決断が一時的な感情ではないこと」をセットで伝えるようにしました。
理由は、感謝を伝えずに断るだけだと関係がぎくしゃくしやすく、逆に感謝だけを伝えて決断があいまいなままだと、再度引き止められる余地を残してしまうと感じたためです。
実際に上司に伝えたのは、おおよそ次のような内容です。「これまで責任のある仕事を任せていただいたことは、本当にありがたく感じています。ただ、今回の決断は今の待遇に対する不満だけで決めたものではなく、これからの働き方やキャリアについてずっと考えてきた末に出した結論です。担当している案件については、引き継ぎで自分にできる準備はしっかりやらせてください」という趣旨で伝えました。感謝と決断の理由をあわせて伝えたことで、それ以降、あらためて強く引き止められることはなくなりました。
引き止めへの対応が、退職後の引き継ぎに響いた話
結論、引き止めのやり取りに時間を使った分、引き継ぎに充てられる時間はさらに短くなりました。
理由は、退職を伝えるタイミング自体がもともと1〜2週間遅れていたところに、複数回にわたる引き止めの面談で数日分の時間を追加で使うことになったためです。
結果的に、以前の記事でも紹介した通り、最終出社日の直前まで引き継ぎ資料の作成に追われることになり、有給休暇も希望していたよりは少ない日数しか消化できませんでした。引き止めをきっぱり断ったこと自体に後悔はありませんが、退職を伝えるタイミングをもう少し早めていれば、引き止めのやり取りに使った時間の分も引き継ぎや有給消化に回せたはずだと、今振り返ると感じています。
まとめ
ここまで、退職を伝えたときに強く引き止められた私の実体験を紹介してきました。
- 後任が見つかりにくい状況や繁忙期に重なると、引き止められやすい傾向がある
- 待遇改善・時期先送り・情に訴える・保留要請など、引き止めにはいくつかの典型的なパターンがある
- 恩義や不安から心が揺れることはあっても、転職を決めた理由そのものが解消されるかどうかを軸に判断すると気持ちが固まりやすい
- 感謝と決断の理由をセットで伝えることで、その後の引き止めを防ぎやすくなる
- 引き止めへの対応に時間を使う分、退職を伝えるタイミング自体はできるだけ早めておく方が、引き継ぎや有給消化にゆとりを持たせやすい
引き止められたときに心が揺れるのは、決して不自然なことではないと思います。ただ、その場の感情だけで判断を変える前に、自分が転職を決めた理由に立ち返って考えてみることをおすすめします。


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