覚えることが多すぎる?未経験から見たIT業界のきつさの正体

IT転職の基礎知識

「IT業界 きつい」と検索して、なんとなく身構えながらこのページを開いた方も多いのではないでしょうか。残業が多そう、人間関係が独特そう、そもそも自分に向いていないかもしれない——検索結果にはいろいろな「きつさ」の理由が並んでいて、結局どれが一番の本質なのか、かえって分かりにくくなってしまうこともあると思います。私自身、転職活動を始める前は同じように漠然とした不安を抱えていました。

この記事では、文系・未経験からIT業界に転職した私が、実際に働いてみて感じた「きつさ」の正体を一つに絞ってお伝えします。残業の実態については別の記事で、職場の人間関係については別の記事で、「IT業界はやめとけ」という評判そのものの検証については「IT業界はやめとけ」は本当?未経験から転職した私が思うことで、入社1年目の心理的な浮き沈みについては自分だけじゃない。未経験IT転職1年目「辞めたい」の乗り越え方でそれぞれ紹介しているので、ここでは触れません。この記事で扱うのは、「覚えることの多さ・技術のキャッチアップの速さ」という、私にとって一番じわじわとこたえた部分です。

この記事でわかること

  • 私が実感した「きつさ」の正体が、残業でも人間関係でもなく覚えることの多さだった理由
  • 具体的に何をどれくらい覚える必要があるのかの内訳
  • 覚える量の多さに押しつぶされないために、実際にやっていること

私が実感した「きつさ」の正体は、覚えることの多さだった

結論から言うと、私が働き始めてから一番こたえたのは、忙しさや人間関係ではなく、覚えなければいけない情報の量そのものでした。

理由は、覚える対象が一度きりで終わらず、慣れてきたと思った頃にまた新しい対象が現れる、という状態がずっと続くためです。

入社してしばらくは、チャットツールの使い方やコードの変更を管理する仕組みなど、職場特有の進め方に戸惑うことが多く、それだけで手一杯でした(このあたりの戸惑いは別の記事で具体的に紹介しています)。数ヶ月かけてようやくその段階を抜け、少し余裕が出てきたと感じた矢先、担当することになった機能で、それまで触れたことのない外部の仕組みを使う必要が出てきました。ドキュメントを読み込みながら、既存のコードがなぜそういう作りになっているのかという理由もあわせて理解しなければならず、「一つ乗り越えたら、また次の山が現れる」という感覚に、正直なところ気持ちが折れそうになった時期があります。残業自体はその週も普段よりやや多い程度で、突出して辛かったわけではありませんでした。それでも疲労感が強く残ったのは、覚えなければいけない情報量の多さが原因だったと、後から振り返って気づきました。

具体的に何を覚える必要があるのか、内訳を整理してみた

「覚えることが多い」と一言でまとめてしまうと漠然としているので、実際に自分が何を覚えてきたのか、種類ごとに分けて整理してみました。

種類によって覚え方も負担の感じ方も違っていたため、ひとまとめに考えるより、内訳を分けたほうが対処しやすいと感じたためです。

覚える対象の種類 具体例 実際にあった場面
技術そのもの(言語・ツールの使い方) プログラミング言語の書き方、Gitなどの操作 入社直後に集中的に覚えた範囲(詳しくは別の記事で紹介)
担当しているサービス特有の業務知識 会員のランクごとの表示切り替え条件、料金プランごとの計算ルールなど 担当機能を任されるたびに、その範囲のルールを一から把握し直す必要があった
社内の暗黙の経緯・判断の背景 「なぜこのコードは今の作りになっているのか」という過去の意思決定の経緯 コードを読むだけでは分からず、SEの同僚に聞いて初めて腑に落ちた

入社直後にきついと感じるのは主に一番上の「技術そのもの」ですが、半年、1年と経つにつれて、比重は真ん中と一番下の「業務知識」「暗黙の経緯」に移っていく感覚がありました。技術の使い方は調べれば答えにたどり着けますが、業務知識や社内の経緯は、実際にその現場にいる人に聞くか、経験を積むしかないという点で、また違う種類のきつさがあると感じています。

なぜ「覚えても覚えても終わらない」と感じるのか

働き始めて一番戸惑ったのは、覚える対象そのものが、ある時点で完了しないことでした。

担当するサービスや機能が変われば業務知識も変わりますし、技術面でも、チームで使っている道具立てが途中で更新されることがあるためです。

以前、チームで長く使ってきたやり方を、途中から新しい書き方に切り替えるという話が持ち上がったことがあります。それまで一年近くかけてようやく慣れてきたパターンだったので、正直「またゼロから覚え直しなのか」という気持ちが真っ先に浮かびました。実際に移行が始まると、以前の書き方との違いを一つずつ確認しながら進める必要があり、最初の数週間は以前よりも作業に時間がかかるようになりました。学生時代の勉強であれば、試験範囲が決まっていて、そこを覚え切ればひとまず区切りがつきます。IT業界の技術的な「覚えること」には、そうした明確な区切りがなく、常に更新され続けるという点が、じわじわとこたえる理由なのだと感じています。

覚える量の多さに、実際どう対処しているか

覚えることが終わらないと分かってからは、全部を頭の中に入れておこうとする発想自体をやめました。

すべてを記憶しようとすると際限がなく、かえって疲れてしまうと気づいたためです。

  • 「覚える」より「どこに書いてあるかを覚える」を優先する:社内のドキュメントやWikiのどのページに何が書いてあるかを把握しておき、必要になったタイミングで見返す前提で進めるようにしています。
  • 新しい技術に触れるときは、先に全体の流れをざっくり掴む:細部から覚えようとすると迷子になりやすいため、まず全体像を掴んでから細かい部分に進む順番を意識しています。
  • 分からなかったことをその都度メモに残す:一度調べて解決したことも時間が経つと忘れてしまうため、簡単なメモを残しておき、同じ調べ物を何度も繰り返さないようにしています。

特に効果を感じているのは、一つ目の「どこに書いてあるかを覚える」という発想の転換です。すべてを覚えていなくても、必要なときに正しい場所へたどり着ければ困らないと考えるようになってから、覚えることへのプレッシャー自体が軽くなりました。

これは未経験者だけの感覚なのか、周囲に聞いてみた

覚えることの多さに疲れを感じていた時期、これは自分が未経験だからこその感覚なのか気になり、入社歴の長いSEの同僚に思い切って聞いてみたことがあります。

もし経験を積めばこの感覚がなくなるのであれば、あとどれくらい耐えればいいのか知りたいと思ったためです。

返ってきたのは、「自分も未だに毎回何か新しいことを覚えている、覚える量が減った実感はあまりない」という答えでした。ただし、新しいことに触れたときの理解のスピードや、「これは前に見たパターンに近い」と見当をつける力は、経験を積むほど上がっていく実感があるとも教えてもらいました。この会話をきっかけに、「覚える量そのものが減る」のではなく、「初めて見る対象への慣れ方が上達していく」のだと考えるようになりました。これはあくまで私の職場のSEの同僚1人から聞いた話であり、全員が同じ感覚とは限りませんが、少なくとも未経験者だけが特別に苦しんでいるわけではなさそうだ、と感じられたことは支えになりました。

まとめ

ここまで、未経験からIT業界に転職した私が実感した「きつさ」の正体について、覚えることの多さという一点に絞って紹介してきました。

  • 私にとっての「きつさ」の正体は、残業や人間関係ではなく、覚えなければいけない情報量そのものだった
  • 覚える対象は「技術そのもの」「業務知識」「社内の暗黙の経緯」の3種類に分けられ、時間が経つほど比重が後者に移っていく
  • 技術は更新され続けるため、「覚え切って終わり」という区切りが来ない
  • すべてを記憶しようとせず、「どこに書いてあるかを覚える」という発想に切り替えると、負担の感じ方が変わる
  • 覚える量が減らない感覚は未経験者に限った話ではなく、経験を積んだ人でも共通して感じている部分がある

「覚えることが多すぎてついていけないかもしれない」という不安は、IT業界を検討するうえで無理もないものだと思います。ただ、それは経験年数が増えれば消える種類の負担ではなく、この業界で働き続ける限りある程度は付き合っていくものだというのが、私の正直な実感です。覚え方そのものを工夫できれば、負担の感じ方は変えられると考えています。

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