「AIが進化したらエンジニアの仕事はなくなるのでは」「もうIT業界に将来性なんてないのでは」——SNSやニュースで生成AIがコードを書く様子を見て、こうした不安を感じたことはないでしょうか。「IT業界 未来がない」と検索している方の中には、これからIT業界を目指すべきか迷っている方だけでなく、すでに転職を決めたあとで急に不安になった方も多いのではないかと思います。
私自身、文系出身でプログラミング未経験からIT業界に転職し、今は開発エンジニアとしてリモートワークをしながら働いています。日々の業務の中で生成AIのコーディング支援ツールに触れている立場だからこそ、「IT業界に未来がない」という論調について、ニュースの受け売りではなく実感として率直に思うことをお伝えしたいと思います。
なお、業界全体の需要や市場動向といった将来性そのものについてはIT業界の将来性は本当?現役エンジニアが語るAI時代のリアルで、労働環境や職場の評判については「IT業界はやめとけ」は本当?未経験から転職した私が思うことで扱っています。将来性の記事ではAIによる仕事の変化にも軽く触れていますが、この記事ではさらに踏み込んで、実際にAIへ仕事を任せてみてわかった「どこまでが置き換わり、どこからは今のところ人が担うのか」という境目と、それでも拭いきれない技術的な不安に絞ってお伝えします。
この記事でわかること
- 「IT業界に未来がない」論が、具体的に何を根拠に語られているのか
- 実際にAIに仕事を任せてみて分かった、代替されやすい業務とされにくい業務の境目
- それでも拭いきれない技術的な不安と、私自身がどう向き合っているか
結論:「未来がない」とは思わないが、不安の正体は分かる気がする
結論から言うと、私はIT業界そのものに未来がないとは考えていません。ただし、AIによって仕事の中身が大きく変わっていくという感覚は、決して大げさな話ではなく実務の中で本物だと感じています。
毎日のように生成AIのコーディング支援ツールに触れながら働いている立場から見ても、単純にコードを書くという作業だけを切り取れば、AIに任せられる範囲は確実に広がっているからです。
一方で、実際に自分の業務でAIに任せてみて痛感したのは、任せられる範囲と任せられない範囲がはっきり分かれているという事実でした。具体的な場面は後ほど紹介しますが、この境目を理解しないまま「AI=仕事を奪う存在」とひとくくりにしてしまうと、必要以上に不安が膨らんでしまうのではないかと感じています。
そもそも「IT業界に未来がない」論は、何を根拠に語られているのか
「IT業界に未来がない」という主張の中身を整理すると、その多くは業界全体というより「AIがコードを書けるようになったこと」を根拠にしていると感じています。
以前、前職時代からの友人が「こんな記事があったけど、プログラマーの仕事ってこの先大丈夫なの?」と、生成AIが数分でアプリの試作品を作り上げる様子を紹介する記事のリンクを送ってきたことがありました。話を聞いてみると、友人が不安に感じていたのは業界の労働環境や需要の話ではなく、「AIが自分の代わりにコードを書けるなら、エンジニアという職業自体が要らなくなるのでは」という一点に尽きるようでした。
SNSやニュースで見かける「IT業界に未来がない」論の多くも、突き詰めると次のような主張に集約されると感じています。
- 生成AIが要件を伝えるだけでコードを書き上げてくれるようになった
- ノーコード・ローコードツールで、専門知識がなくても簡単なアプリが作れるようになった
- 単価の安い定型的な実装作業から、真っ先にAIへ置き換わっていく
これらはいずれも、実際にAIツールを触ったことがあれば分かる事実の一部を含んでいます。ただし、私が実務の中で感じているのは、「コードを書く作業」と「エンジニアという仕事全体」は必ずしもイコールではないということです。次の見出しから、実際にAIに仕事を任せてみて見えてきた境目を具体的に紹介します。
実際にAIに仕事を任せてみて分かったこと
結論として、AIに任せて助かった場面と、任せたことでかえって手間が増えた場面の両方を経験し、その違いが「不安の正体」を考えるヒントになりました。
AIが得意なのは、仕様がはっきりしている作業を素早く形にすることですが、現場の仕様には仕様書に書かれていない「暗黙のルール」がどうしても混ざり込むため、そこを見落とすと簡単に判断を誤ってしまうと実感したからです。
以前、既存の管理画面に軽微な仕様変更を加える作業で、生成AIに実装をほぼ一任してみたことがありました。仕様書に書かれた条件どおりのコードは数分で仕上がったのですが、レビューを担当した先輩から「このケースだと、去年の運用トラブルをきっかけに追加された例外処理が抜けている」と指摘を受けました。その例外処理は仕様書には明記されておらず、社内のやり取りの中でしか共有されていない、いわば「現場の暗黙知」だったのです。AI自身に非があったわけではなく、そもそも私がその暗黙のルールをAIに伝えられていなかったことが原因でした。この一件で、AIに仕事を任せる前提として「そもそも人間が正確に条件を伝えられているか」という部分に、これまで以上に神経を使うようになりました。
AIに置き換わりやすい業務・置き換わりにくい業務の境目
この経験を通して、AIに置き換わりやすい業務と、今のところ置き換わりにくい業務を自分なりに整理するようになりました。
| 業務内容 | AIへの置き換わりやすさ | 実務で感じた理由 |
|---|---|---|
| 仕様が明確な定型的なコード実装 | 置き換わりやすい | 条件がはっきりしていれば、AIが短時間で形にしてくれる |
| テストケースやドキュメントのたたき台作成 | 置き換わりやすい | ゼロから書く手間が減り、確認・修正に回す時間を増やせる |
| 仕様書に書かれていない暗黙のルールの反映 | 置き換わりにくい | 現場の経緯を知っている人間が伝えないと、AIには判断できない |
| 関係者間で仕様のズレをすり合わせる調整 | 置き換わりにくい | 言葉にしきれていない意図をくみ取るやり取りが必要になる |
| 障害発生時に原因を切り分けて判断する対応 | 置き換わりにくい(今のところ) | 状況ごとに異なる要因を組み合わせて判断する場面が多い |
もちろん、この境目は今この瞬間の実感であり、AIの進化によって今後変わっていく可能性は十分にあると感じています。だからこそ次の見出しでは、境目そのものが変わっていくことへの不安についても正直に触れておきたいと思います。
それでも拭いきれない不安——「置いていかれるかもしれない」という焦り
正直に言うと、私自身「AIに仕事を奪われる」こと以上に、「AIを使いこなす側についていけなくなるかもしれない」という焦りの方が強く残っています。
数か月おきに新しいAIツール・使い方が話題になる中で、周囲のエンジニアが次々と新しい使い方を取り入れていく様子を見ると、自分だけが取り残されているような感覚になることがあるからです。
あるとき、同じチームのメンバーが複数のファイルにまたがる修正をAIにまとめて任せ、自分よりずっと早く作業を終わらせているのを見て、素直に焦りを感じたことがあります。その日はすぐには真似できず、もやもやした気持ちのまま帰宅したのを覚えています。ただ、後日そのメンバーに使い方を聞いてみると、任せきりにしているわけではなく、AIが出した修正案を1つずつ丁寧に確認し、疑わしい箇所は自分で書き直していると分かりました。時短の部分だけを見て焦っていましたが、実際には「早く終わらせる工夫」よりも「正しく判断する力」の差だったのだと気づかされた出来事でした。
これからIT業界を目指す・働き続けることを考えている人へ、私が思うこと
ここまでの実感を踏まえたうえで、率直に言うと「IT業界に未来がない」と決めつけて足を止めてしまうのはもったいないと感じています。
AIによって作業のやり方は確実に変わっていきますが、仕様の背景を理解し、関係者とすり合わせ、状況に応じて判断するという部分は、今のところ人が担う役割として残り続けているからです。
もちろん、これは今の私が身を置いている環境で感じていることであり、この先の技術の進み方によって状況が変わらないとは言い切れません。それでも、「AIに仕事を奪われるかもしれない」という漠然とした不安だけでこれからの選択を決めてしまうより、AIをどう使いこなし、どこに人の判断を残すかという視点を持っておく方が、今の私にはずっと建設的に思えます。業界全体の将来性や市場の動向については、あわせて別の記事も参考にしてみてください。
まとめ
ここまで、「IT業界 未来がない」という不安に対して、AIによる仕事の代替という技術的な側面に絞って、実務で感じていることをお伝えしてきました。
- 「未来がない」論の多くは、AIがコードを書けるようになったことを根拠にしている
- AIに仕事を任せてみると、仕様が明確な作業と、暗黙のルールが絡む作業とで置き換わりやすさがはっきり分かれる
- 仕事を奪われる不安以上に、AIを使いこなす側についていけるかという焦りの方が実感として強い
- 境目は今後変わる可能性があるからこそ、AIをどう使いこなすかという視点を持っておきたい
「IT業界に未来がない」という言葉だけで判断を決めてしまうのではなく、実際の業務でどんな変化が起きているのかを知ったうえで、自分なりの向き合い方を考えてみてもらえたらと思います。


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